(前作「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のネタバレを含みます)
2023年1月15日(日)から、劇場作品「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」を全4話にしたテレビバージョンが放送されています。
「水星の魔女」からガンダムを観始めた方や、これを機にガンダムを観てみようという方も多いと思います。
水星の魔女は新しい世界観だったので、初めての方でも観やすかったかもしれないですが、「閃光のハサウェイ」は「宇宙世紀シリーズ」の中の話です。つまり世界観やこれまでの話の流れを知っていないと、ちょっと観づらい作品かもしれません。
もちろん何も知らないで観ても面白く、映像も細かく作り込んであるので、見どころは沢山あります。ただ「宇宙世紀」の話は作品がとても多く、それぞれで解釈が違ったり設定が微妙に違ったりするので、とても奥が深くて難しいです。
今回は簡単に「これを知っていたら、初めてでももっと楽しめるかも」というものを説明してみたいと思います!
暦は宇宙世紀0105年(U.C.0105)
「閃光のハサウェイ」の世界は、「宇宙世紀」という暦になっています(別名ユニバーサルセンチュリー:UC)。今作は宇宙世紀0105年。人類が宇宙移民を開始して、西暦から宇宙世紀に改暦して100年とちょっと経った頃の話です。
宇宙世紀は、地球と月の周りに人工都市「スペースコロニー」の群がいくつも浮いていて、その中で人は生活をしています。そういったコロニーや月など宇宙に住む人々を「スペースノイド」、地球に住む人々を「アースノイド」と呼びます。
地球連邦政府、宇宙移民と例外規定
宇宙世紀を始める時、宇宙移民をするために設立された組織が「地球連邦政府」です。
西暦、人口が100億に到達しようとしていた頃、地球では人口増加による環境汚染問題、食料飢餓などの問題が起こっていました。これに危機感を抱いた人類は、新しく宇宙に住むということにしました。
これは地球のために強制的に行われなければいけなかったので、そのために「地球連邦政府」という組織が作られ、宇宙移民計画が始まりました。
しかし計画がある程度進んだ頃、地球に残りたいという人たちが現れて、宇宙移民のための法律「宇宙移民法」を自分たち権利者の都合のいいように使い始めました。その法律には「例外規定」という、地球の文化や環境を保全する人々は地球に残ってもいいというものもありました。「地球居住許可証」を持っていない人たちは、刑事警察機構の「マン・ハンター」によって、宇宙に強制送還されています。
最初は強制移民であったはずなのに、結局は地球に住み続ける人たちの権利を振りかざしている。そうして生まれた差別が元で、この世界では何度も戦争が起こってきました。
「閃光のハサウェイ」はそうした世界の話で、劇場作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の続編です。
(閃光のハサウェイは元々小説で、小説版逆襲のシャア「ベルトーチカチルドレン」の続編でした。今回の劇場版「閃光のハサウェイ」は、劇場版の「逆襲のシャア」の続編なので、小説とは少し設定が違います)
ハサウェイの過去
主人公「ハサウェイ・ノア」は、「ブライト・ノア」と「ミライ・ヤシマ(ノア)」の長男です。
「ブライト・ノア」と「ミライ・ヤシマ」は、ガンダムの1作目「機動戦士ガンダム」に登場した人物です。主人公たちの艦「ホワイトベース」の乗組員でした。「ブライト・ノア」は艦長、「ミライ・ヤシマ」は操舵手という役割でした。その後「機動戦士ガンダム」の話である一年戦争が終わり、2人は結婚。ハサウェイとチェーミン(妹)の2人が生まれました。
子供の頃のハサウェイは、宇宙世紀0087年の「機動戦士Zガンダム」や、宇宙世紀0093年の「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」にも登場します。
前作「逆襲のシャア」では、主人公たちの連邦宇宙軍ロンド・ベルの艦「ラー・カイラム」に偶然乗り合わせ、最後まで登場しました。その時に一緒に乗った「クェス・パラヤ」という同年代の女の子がいたんですが、彼女はシャアによって連れ去られてしまい、「ネオジオン」のパイロットになります。
「逆襲のシャア」の後半、クェスを取り戻すために、待機中のモビルスーツ「ジェガン」を勝手に動かして出撃(脱走?)します(「閃光のハサウェイ」作中で「モビルスーツを一機墜とした」と言われますが、それはこの時に偶然撃墜したネオジオンのモビルスーツ「ギラ・ドーガ」のことです)。
そしてモビルアーマーのパイロットだったクェスに接触できますが、同じ戦艦のクルー「チェーン・アギ」が乗る「リ・ガズィ」に、クェスを撃墜されてしまいます。それに激昂したハサウェイは、チェーンの乗るリ・ガズィをビームライフルで撃墜してしまうのでした。しかしクェスを止められなかったこと・救えなかった事がハサウェイの中でトラウマになっていきます。
それからのハサウェイのなりゆきは、劇場版「閃光のハサウェイ」ではまだ描かれていないんですが、しばらく軍役にいたようです。
そして「アマダ・マンサン」という人物の元、植物監視官の訓練を受けることになります。その後「クワック・サルヴァー」が設立した反地球連邦政府組織「マフティー・ナビーユ・エリン」に参加し、リーダーとなります。組織と同名の「マフティー・ナビーユ・エリン」という名前で組織を束ね、政府高官を暗殺していくマフティーですが、月と地球の定期便「ハウンゼン356便」に乗り込んだところから劇場版「閃光のハサウェイ」は始まります。
マフティーの目的
マフティーの目的は、「地球帰還に関する特例事項」という法案の可決を阻止することです。それは「地球連邦政府が認めた人だけが地球に住む事が出来る」という内容になっていて、劇場版「閃光のハサウェイ」では、まもなくオーストラリアの「アデレード」の中央議会会議で可決されようとしています。
その法案の可決をやめさせるべく、政府高官を暗殺していき、要求をしています。
マフティーのもうひとつの目的は、「宇宙移民計画」の本来の目的である「人類を全て宇宙に上げる事」です。それを暗殺や脅迫などを行って目的を達成しようとしているテロリストが、「マフティー」という組織です。
ハサウェイがマフティーの活動を始めた理由は上記なんですが、実は本人は「シャア・アズナブル」の理想に感化されています。前作「逆襲のシャア」で、シャアは小惑星アクシズを地球に落とすという作戦を行います。巨大な隕石を落とすことによって地球が寒冷化をさせて人を住めなくし、全人類を宇宙に上げようとしました。
やり方は狂気そのものですが、「人類は全て宇宙に上がって地球を休ませて保全するべき」という理想を、ハサウェイは受け継いで活動しています。
モビルスーツとガンダム
この世界のモビルスーツは、1作目「機動戦士ガンダム」に登場するサイド3コロニー群にある「ジオン」が発明したもので、コロニーの作業用機械技術を応用した有人人型兵器です。
宇宙世紀は、レーダーや通信を妨害したり特殊な力場を作る事が出来る「ミノフスキー粒子」が発見された世界です。ミノフスキー粒子がある事でレーダーによる誘導兵器は使えなくなり、戦闘は人による有視界で行わなければいけなくなりました。(またミノフスキー粒子の原理を応用して力場を発生させる事で、地球でも戦艦を浮かせたり出来るようになりました。)
モビルスーツは戦艦よりも機動性が高く、戦闘機よりも火力を持っています。それによって宇宙の戦場を支配する兵器になり始めました。何度か起こったのジオン軍との戦闘で圧倒された事で、連邦軍も形成を逆転するために重要視し始めます。
そこで連邦軍が初めて開発したモビルスーツが「ガンダム」です。
最初のガンダムは当時の最新技術を投入して作られました。それに「アムロ・レイ」が乗り込んで戦果を上げていったことで、伝説となっていきます。
宇宙世紀の世界の「ガンダム」は、最新技術を投入して作られたり、何かのフラッグシップとして作られたり、特別な意味を込められて作られてきたモビルスーツです。
宇宙世紀で、モビルスーツや戦艦を作る企業として登場する事が多い「アナハイム・エレクトロニクス」という月の企業があります。アナハイムはたくさんのガンダムも開発してきた企業なんですが、部署が多いために、裏で技術流用が行われていたり、裏取引がされていたりと、何かと闇が多い企業です。
劇場版「閃光のハサウェイ」でもアナハイムが登場します。マフティーはアナハイムにガンダムの開発を依頼していて、テレビ版第一話では、実は月にその機体の様子を視察しにきていたのです。
(マフティーのガンダムには、当時最新技術である「ミノフスキー・フライト」という技術が使われています。これはモビルスーツを補助なしで飛行(フライト)させることが出来る技術です。これまでのモビルスーツは、ジャンプや滑空は出来ても、単機での飛行は難しいことでした。マフティーのガンダムに使われることで、初めてモビルスーツに搭載されることになります。)
何度も観たくなる、閃光のハサウェイ
今回の作品「閃光のハサウェイ」を観るにあたって、知っておくとより理解できる事前知識でした。
これらの設定などは作品によって深掘りされていたり、微妙に背景が違う事が多いものです。他の宇宙世紀シリーズのガンダム作品を観てみると、より「閃光のハサウェイ」も楽しめると思います!
ガンダムの設定自体かなり奥深いので、僕も少し間違っているかもしれませんが、少しでもガンダムにハマってくれる方がいたらとても嬉しいです。
僕も劇場版「閃光のハサウェイ」は、映画館や配信で何度も観たんですが、テレビ版も楽しみに観ています。